企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第七回 『加速する賃金上昇傾向と人手不足問題』

前回4月号の「人事・備忘録」では、従業員や求職者に向かって「なぜ接種しないのか?」と質す行為にはリスクが生じるものの、一方で「ワクチン接種済みですか?」と尋ねることになんら問題はないこと。ただし、それら対象者に接種記録(証明カードやワクチンパスポート等)を提示するよう追加で求めるのはこれまたリスクを生む行為となり、理由は感染者はADA(米国障がい者法)の下では保護される立場にあり、別の傷病を負った者と同じように扱わねばならない為だとお伝えしました。かつ、雇用主側は最大の取り組みとして、Covid-19に関わる全てを盛り込んだ「企業方針」を、通常の就業規則とは別に設けておく必要があるということも念入りにお伝えしました。

ところで、徐々に減っていた感染者数がここのところ再び増加に転じているのが気になるところですが、これ以外にも、ウクライナ侵攻やそれに伴うロシア国債のデフォルト危機および中国の長期に亘る上海ロックダウン(都市封鎖)等々が、コロナ禍と同時に始まった製造に携わる労働人口の大幅下落や物流の依然とした滞りが世界規模で回復し切っていないところに追い討ちをかけています。

他にもまだあります。これらの事象による歴史的インフレや連邦準備理事会(FRB)による政策金利の引き上げ(利上げ)とが相俟って、経済面では米国や日本株の暴落、さらに円安が起こるなど、パンデミックに突入した2020年の時以上に、今後、従業員やその家族など人々の暮らし向きが心配されます。

このような現代人がかつて遭遇したことのない世界が進行する中、直近の米国の物価上昇率が昨年比で2月は7.9%、3月は8.5%、4月は8.3%と米政府機関により発表され、とりわけ3月の数値は1981年12月以来の最大の上昇率となり、いわんや「賃金上昇率の方は推して知るべし」です。

多くの在米日系企業がこのような賃金上昇の圧迫を受ける中、リモートワークに慣れ親しんだ従業員たちはというと、会社からの出勤再開の要請には前向きになれず、さりとて出勤を強制すれば退職も辞さない構えと聞きます。都市部ではリモートワークが成立する職務が多いのでまだ対処が可能であるものの、対する地方では工場勤務が専らで、現時点で従業員の補充に四苦八苦し、日本から出向してきた駐在員までもが3交代制の勤務シフトに加わる事態になっており、業種問わず、薄氷を踏むが如く日々の人事運営をしている状態ですが、渦中にあるのはやはり「人手不足」の問題です。今回の「人手不足」がいつ収まっていくのかが誰もわからない今日、今後はこの人手不足と絡めつつ企業の人事運営に焦点を当てていきたいと思います。

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