ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第40回 『人余りの始まり(2)』

前回=8月24日号掲載=そして今回のコラムを見られた方はさぞかし「うむっ?」と訝ったことでしょう。長らく用いてきている横の見出し「人手不足」を変えることなく縦の見出しを「人余りの始まり」としている矛盾に対してです。

これには理由があって、実際に業種・職種によってはまだまだ人材不足のところが多いですし、今後はますます継続して人手が不足する職種と人余りまたは人力が不要になっていく職種とで明確に線引きがなされていくでしょうが、例年通りであれば年末商戦に向けて夏以降に製造業なら国内でも増産に着手し、物流が活発になり、小売業および外食産業も雇用を増やす頃合いと考えられる時期にもかかわらず、7月の(非農業部門の)雇用増加数は11万4000人で過去3カ月に比べて極端に下がったのに続き8月の雇用増加数すらも予想を下回って14万2000人と芳しい数字ではなかった様子。これは8月の失業率が7月の4.3%に続いて4.2%とわりかし高い数値だったことからも窺えます。

それと驚くべきことに9月3日「米国の雇用増加数 80万件以上 低減」との見出しで米労働統計局より出されたのが、「昨年4月から今年3月までの12カ月を再集計したところ当局がこれまでに報告した雇用数合計よりも81万8000件少なかった」との発表でした。月平均に換算すれば実に毎月6万8000件強も下方修正されたことになります。つまり「大退職時代」や「活発な転職活動」と労働者転職者がもてはやされていたにもかかわらず、昨春以来の米国の雇用増加数は思ったほど多くはなく、また今後の雇用の勢い自体も鈍化していることが明らかになった証とも言えますが、けだしこのことは実際の統計結果を待たずとも既に大勢が肌で感じておられることでしょう。

加えて物価上昇率の方も、「7月が前年比2.9%、この数値は2021年以来初めて3%を下回った」と前回で書いた矢先に8月は2.5%までに下がりました。見方を変えれば落ち着いたとも言えます。しかしながら今夏の米国は物価が高止まりしているとはいえインフレ率が鈍化したゆえに連れて賃金もが労働者が期待するほどに上がらなければ雇用市場は魅力的には映りません。言い換えれば強気で職探しをしていた労働者たち(人材ともいう)が願うほどの高給の職にありつけない事態とも言えますが、対する雇用主側は労働市場が冷え込んできているのを直感的に感じ取り、社員たちは転職しない筈と安心して大半の従業員の賃金の上げ幅を今年は穏やかなものにする筈です。こqれはここ数年で上げ過ぎた(と雇用側が思っている)給与額をこの機に抑制することで適正な給与値に戻し安定した経営をしたい思いからでしょう。

以上、人手不足・人余りに二分化していくことが、相対する見出しを掲げた由であります。

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