ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第36回 『米国世情と日系企業人事の隔たり(7)』

前回=4月27日号掲載=のコラムの末尾で、The Equal Pay Act違反と問われぬよう雇用主は「年功序列システム・メトリックシステムなど正式に定めた制度の下で各従業員の給与調整を行っており、性別によって給与額を決めていないことを証明する必要がある」と書きました。では証明するには如何なることをするべきか? それには先ずは後出しじゃんけんとみられぬよう前もってルール、制度及びシステムを確立し書面化しておくことが唯一の方法となります。

雇用主(企業)が取り組むべき第一歩は「ルールの書面化」、即ち各々の従業員の給与が最終的に何故その額になったのかを論理的に説明できる制度の構築が必要だということ。理由は(元)従業員から問題提起または訴えを起こされた際に管理職者が自身の頭の中にあるルールを説いてみたところで証を立てられるわけもなく証言は妥当性を欠き、結局は恣意的に給与額が決められたとみなされるからです。

ここ迄で書面化の重要性を理解されたなら次に移りますが、性別によって給与額を決めていないことを証明する必要性において、「えっ! 年功序列システムでも良いのか?」と感じられた方もおられるでしょう、答えはイエス。

(いわゆる)年功序列システムは自社での勤務年数に応じて給与額を上げていく昇給制度を指し、卑近な例だと、毎年給与額を全員一律に引き上げていくや、毎年付与するボーナス額を一律上げていくなどがあります。要は給与額決定の過程に性別あるいはその他の差別的行為が入る余地がないことを証明できれば良いわけです。(但し年功序列システムを採用した企業に優秀な従業員が不満なく居続けてくれるかどうかについては言わずもがなです…。)

ところで「差別行為があったかどうか」が裁判で認められるにはDisparate TreatmentとDisparate Impactのいずれかまたはどちらもがあったかどうかが問われます。前者は「(不公平で)異質な扱い」、後者は「(不公平で)異質な影響を与えた」を指しますが、これを上述の年功序列システムに当てはめてみるなら、全対象者に等しく適用していれば、異質な扱いはなく、また勤続年数が増していく過程で同じ従業員区分の誰かに異質な影響を与えてもいないため、そこに禁止された理由による差別を意図するものが入っていない限りは差別に当たらないことになります。

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