ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第39回 『人余りの始まり(1)』
当コラムを読まれる皆さん方も既に色々な媒体で目にしたことと思いますが、米労働統計局から出された先月の雇用関連統計数値や先行指標に基づき、報道機関各社が8月初めに相次いで今秋以後の景気予測を行いました。
その中の雇用に関係した7月の統計結果は、失業率が4.3%、非農業部門の雇用数が前月比11万4000人増、物価上昇率が対前年同月比2・9%でした。
ちなみに4月・5月・6月の失業率はそれぞれ3.9%・4.0%・4.1%と推移して来て7月時に4.3%と上げ幅を大きくし、かたや4月・5月・6月の非農業部門の雇用増加数は前月比17万5000人・27万2000人・20万6000人と上下動しつつ7月には11万4000人と極端に下がってしまった由。
尚、4月時の17万5000人増との結果には「過去6カ月間で最低の雇用増加数を記録した」との注釈が添えられており、他方で、7月の雇用増加数も4月の実績に同じ17万5000人と予測していたのがそれを6万人以上も下回ってしまった事実をエコノミスト達は相当深刻に受け止めているようです。
あと、前月の当コラム=7月27日号掲載=にて「鈍化傾向が確定しつつあり、経済が少しずつパンデミック前の状態に戻っていく」と書いたものの、他に同じく7月の物価上昇率の結果は予測値の3.0%より低い2.9%で、これが2021年以来初の3%を下回ったことと相まって、今日では鈍化を超え景気後退を恐れる雰囲気が米国全体を覆い始めて来ています。
とにかく景気動向を予測するのに用いられるファクターの中の失業率や雇用増加数いずれの7月の数値もが予想に反するかまたは予測値まで達していないことから、各ニュースはこれらの動きをFRBが9月に利下げに動く可能性と絡めて報じたところが大半でした。
しかしながら、そもそも幾多の雇用を生み出した大手製造業種が全盛を誇ったかつての時代とは打って変わり現在の米国はそれほど雇用を生まないIT産業やIT関連業種が勃興し、況してやそこにAI(人工知能)技術までもが導入され始めれば以後は多くの職種が消失し、とりわけ米国をはじめとする先進国の雇用総数に多大な影響を及ぼすこと必至。
但しそこまで先読みせずとも「現従業員の転職熱が冷め、会社も従業員を補充せず、インターンシップ採用数(新卒枠)すら減っている」との現状を前月の当コラムでも書きましたが、不況期の如き「職に就けるだけ有難い」と皆が考えるようになる時代がもうそこまで来ているかもしれず、さすれば当コラムのサブタイトル「人手不足」は「人余り」あるいは「人員過剰」に置き換えられることになるでしょう。