ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第33回 『米国世情と日系企業人事の隔たり(4)』

昨年11月25日号掲載の当コラムにて、1963年にできた連邦法The Equal Pay Actを取り上げました。理由は当コラムの見出し「人手不足」を解く鍵は同法にあり同法を理解することが解決への端緒ともなると考えたからです。

日本語にすると「同一賃金法」とも「給与平等法」とも訳せるでしょうが、先の幾多の戦争で多くの男性が兵役のために職場を離れ、それまで専ら家事を担っていた女性が男性に代わって(外の)労働に大量に加わったものの当時は男性の6~7割程度の賃金(注)しか貰えず、同様の職務に同様の条件下で就く男女間の給与額に著しい格差があることを解消しようとしたことが同法制定の背景にあります。((注)同法成立当時の女性の収入は男性の収入1ドルあたりわずか59セント:出典はCenter of American Progress)

しかしながら、同法成立から60年以上経つにもかかわらずそして所謂DEI(Diversity多様性・Equity公平性・Inclusion包括性)意識が高まる昨今の流れの中にもかかわらず、今以て男女の給与格差はみられ加えて人種別にも給与格差があることから、近年は同法そのものの解釈を拡大したり派生して新法が設けられるなど是正する動きが活発化しています。

同法の精神を受け継いで設けられたものには例えばSalary History BansとPay Transparency Actがあります。これらを簡潔に申せば、応募してきた求職者の給与履歴を訊ねることを禁止する法律、公平性と透明性を高めるべく先んじて自社給与額を公表せよとの法律であり、各地域で法律名は異なるもののこれらの総称といえます。

Salary History Bans、即ち「前社ではいくら給料をもらっていましたか?」「現職での給料額はいくらですか?」と質すことは22の州22の自治体で既に禁止され、そしてこの流れは今年初めのバイデン政権が連邦政府の請負業者にも課す動きなどから今も続いており、そのうち米全土で禁じられる日が来るかもしれません。

対するPay Transparency Actの方は各地によって制約や内容が大きく異なり、従業員50名以上としているところもあれば15名以上や4名以上の企業に課すとする州もあり、人数以外の条件では求職者や従業員から求められた場合のみ(最低および最高の給与範囲と福利厚生を)開示義務が生じる州や募集広告を出す際にpay range(給与枠)を記載することを義務付ける州などがあります。要は後出しじゃんけんとならぬよう募集するポジションの給与枠を予め内外に公表せよというのが核心部分となります。

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